2003.04.17 update
 FanFiction Novel 「饒舌なキス」: FINAL FANTASY XI




「誰?」
「貴様こそ誰だよッ!ティナになにしてやがんだ!!」
「えっとあのその、まってよジェネ……」
あたふたと言い訳しようとするあたしを制して、レイヴンさんがすっくと立ち上がる。鼻先の斧も同時に移動するのに、まったくお構い無しで。
「わたし達冒険者の武器は人に向けるものじゃない。獣人やモンスターに向けるためのものよ。喧嘩ならいくらでも相手になってあげる。斧しまいなさい」
背中に背負った巨大な両手剣を外してあたしに渡して、レイヴンさんが啖呵を切った。
(ひゃーかっこいいー)
あたしってばどっちを応援してるんだか。
「上等だ……」
彼はいまいましげに歯をきしらせて斧をあたしに押し付けた。
「ティナの彼氏?」
「うん」
「じゃ、手加減してあげる」
彼から視線を外さずに、レイヴンさんが人ごみから離れる。群集から少し離れたところで、彼が先制攻撃を放った。強烈な右フック。モンクも真っ青。だけどレイヴンさんはひょいと身軽にかわす。
エルヴァーンの戦士どうしの、派手な喧嘩が始まった。

競売所で買い物をしてた人、通りすがりの人、野次馬がどんどん増えてまさに黒山の人だかりだ。あたしはその最前列で、二人の喧嘩をはらはらしながら見守っていた。
といってもレイヴンさんは恐ろしく強くて、ジェネの渾身の攻撃もひらりとかわし、受け止めてしまう。そして隙を見せる度に、平手でぱしぺしと彼をはたくのだ。完全に遊ばれちゃってる。ううっ、ジェネ可哀想……。
にーちゃんどうしたー! がんばれよー! などとからかい半分の野次が飛ぶ。
さすがに気の毒になってうるうるしてると、ぽんと頭に手をのせられた。みあげれば、純白の騎士服に銀の髪のエルヴァーンが見下ろしていた。
「グランセスさん!」
「ティナ。ひさしぶりだな。元気だったか?」
「うん! グランセスさんも! ……って、止めてくださいグランセスさんーんっ!」
あたしはグランセスさんの服にすがりついた。と、その言葉も終わらない内に、彼の手があたしの顎を軽く持ち上げて、迫ってくる顔。重なる唇。
(もうーこの人たちはどーしていきなりキスなのーっ? 人前でぇぇ)
幸か不幸かグランセスさんのキスは、ちゅー、って唇を吸っただけの軽いキスだったんだけど。目を向ければ、レイヴンさんにがっちりと羽交い締めにされたまま、顎を落として硬直するジェネと視線があってしまったのだった。

それから喧々囂々、嵐が吹き荒れて。陽気に手を振るレイヴンさんと余裕綽々のグランセスさんと別れて、レンタルハウスへ戻って来た。さすがに狩りにはいけないよね。
「で? 結局なんなんだよ、あの二人は」
最大級の仏頂面で、むっつりとソファに座った彼が、言う。
「えっと、あっと、そのあの……あたしの……」
「ティナの?」
「……ハジメテノヒト」
額に汗を浮かべてぼそぼそとつぶやくあたし。ぴきっと青筋を浮かべるジェネ。
「あの騎士野郎がか?」
「それと、レイヴンさん」
「は?」
「だからその……二人がかり」
後になって思い出して笑える程に、その時の彼の表情の変化は面白かった。本人にそんな事、口が裂けても言えないけど。
「……」
彼は頭を抱えてしまった。そしてぼそっとつぶやく。
「遊びなのか?」
「え」
「そんな女だとは思わなかった! 俺との事も遊びだったのかよっ!」
並んで座っていたあたしの胸ぐらを、ジェネがつかみあげる。
「そんな事ないよ! あたし、ジェネの事マジメに好きだンむーっ」
もーっアンタらキスする前にヒトの話を聞けーっ。
レイヴンさんの甘くてとろけるようなのとも、グランセスさんのあったかくて包み込むみたいなのとも違う、噛み付くような激しいキス。
荒っぽくて息つく暇もないくらいだけど、あたしはこのキスがとても好きだった。

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