白萩鐶 Original Novel WebSite "猫がいってしまったので 1.1"
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倫敦睡夢1 薄紅色の小さな花 

 夕食後のひとときを過ごし一人息子で今年10才になるアンディの話相手をした後、書斎に入って今日の仕事の整理をするのが、ゴートレック家の若き当主スコットの日課だった。
「今日も遅くなりそうなんでね。すまないがセアラ、寝る前でいいからお茶を入れてくれないか」
 スコットはセアラのような使用人に対しても物腰柔らかく、丁寧な言葉を使う。
「かしこまりました」
 主人と使用人の受け答えをようやくまともにできるようになったセアラは、未だ着慣れない制服の裾をひっぱった。

 7才の年に母親が行方不明になり、父親はそれ以前から姿がみえず、セアラはボロボロのアパートメントを放り出された。ボロ布を纏って橋の下に眠り、ツテをたよって花売りなどをした。が、安く花を仕入れさせてくれていた農夫の老人が死ぬと同時に、セアラのほんのわずかな収入もなくなった。 
 街角で物乞いをして道行く人々から施しを受ける生活は辛く、ひもじく、寒く、やがて生きる気力も失って、路地裏に転がっていた所を通りかかったのがスコットだった。
 家に連れてこられ、温かいスープと焼き立ての柔らかいパンを与えられ、セアラは夢中で食べた。それからは台所の隅の物置きに毛布を持ち込んで寝る事を許された。時折雑用を与えられながら4年を過ごすうちに、セアラはようやく言葉をとりもどした。乞食の生活で幼いセアラはひどい言語障害に陥っていたのだ。
 12才になったその日、台所の隅の物置きで、下男のガロンにもらった一切れのクッキーで一人誕生日を祝っていると、スコットが台所に降りてきた。セアラにとっては死にかけていた所を救ってくれた神様のような人である。あわてて物置きから這い出し、床にひれ伏した。
「やあ、セアラ。大きくなったね。ジュリアの話じゃ無事に言葉も取り戻したようだし」
「『はい。旦那様』とお答えするのよ、セアラ」
こっくりと頷いたセアラに言ったのはスコットの後ろに控えていたメイド頭のジュリアだ。
「はい。ダンナサマ」
 スコットはゆっくりと頷くと台所にしゃがみこんで、セアラの顔をのぞきこむ。セアラは緊張に顔をこわばらせた。心臓がばくんばくと大きく鳴って口から飛び出しそうだ。
「セアラ、うちでメイドとしてちゃんと働く気はあるかい?」
「え、そんな、おっかないこと……」
「おや?ジュリア、うちはそんなにおっかないところなのかい?」
 スコットはくすくす笑う。
「旦那様、セアラはおそれおおい、と言いたいのだと思いますわ」
「なるほど。しかし怖がることはないよ、セアラ。君にその気があるなら、必要なことはこのジュリアがちゃんと教えてくれるだろうし、私室を用意するしお給金も支払うからね。まあ、最初は見習いからだけど」
「はい!ダンナサマ!!」
 嬉しくて、セアラは精一杯に答えた。

 主人の使った食器類は台所で洗った後、新しい布巾でひとつひとつ丁寧に磨きあげる。真鍮製のドアノブに燭台、飾り棚にはクリスタルガラスのグラス、華麗な絵皿、金の環でふちどりされた白磁のティーセット、寄木細工の床。メイドの仕事の大半はなにかを磨くことだ。そしてその合間に給仕をし台所を手伝い、掃除をして洗濯をする。
せっせと働いて、最後に言いつけどおりお茶を入れに台所に向かったころには既に午後11時をまわっていた。メイドの朝は早い。あくびを噛み殺しながらセアラはティーセットとサンドウィッチなどの軽食一式を乗せたワゴンを押した。
 書斎の重厚な扉をささやかにノックすると、応える声がかすかに届いた。
「失礼致します。お茶をお持ちしました」
 重たい扉を押し開けて一礼し、ワゴンを押して中に入る。
「メイドがすっかり板についてきたね、セアラ」
「恐れ入ります」
 壁を覆い、天井まである巨大な書棚にしつらえられた梯子から、スコットは身軽に飛び下りた。一日の疲れをみせない軽い足取りでセアラの通った扉へ向かい、閉める。
「あ、申し訳ありません」
 本来入ってすぐにセアラ自身が閉めるべきであった。慌てて頭を下げる。
「そんなことはいいから」
 スコットは机の前の革張りの椅子に深く腰掛け、手招きした。
「こっちへおいで、セアラ」
 なんの疑問も持たず、セアラはお茶を入れる手を止めて男の側へ近寄った。仔犬が主人を慕うように。
 スコットは男の割に細くしなやかな指を伸ばして、セアラの腕をつかむ。そのまま引きよせ、おのれの膝に座らせる。今までにないことにセアラは戸惑ったが、自分を見るスコットの目が優しかったので、じっとしていた。
「セアラはいくつになった?」
「あの……、14、だと思います」
「思う?」
「旦那様に助けて頂いた頃のことは、よく覚えていませんので……」
 その言葉にスコットは切なげに眉をよせた。
「辛い思いをしたんだね、セアラ。今はどう? 辛くない? ジュリアやロバートは優しくしてくれるかい?」
「はい。旦那様には本当によくしていただき、感謝の言葉もございません」
 神妙に答えるセアラにスコットはくすりと笑った。
「今の台詞は暗記してたねセアラ。ジュリアに教え込まれたんだろう?」
 どうして解ってしまったんだろう? 不思議に思いながらもセアラはくすくすと笑うスコットにつられて微笑んだ。
「随分と可愛らしい娘になったね。君をひろって正解だったよ」
 スコットは膝にのせたセアラの髪をなでる。なんだか気まずい感じで彼女は身じろぎした。少女の細い腰に男が手をまわす。強く抱き寄せ、耳朶に口をつけた。
「!?」
「いいコだね、セアラ。じっとして」
 耳朶をふくんだまま、小さくささやく。が、動くどころかセアラは驚きのあまり硬直していた。それをいいことにスコットは腰にまわした手に力を込め、もう一方の手でセアラの頬を肩を腕をゆっくりと愛撫する。やがてその指先は胸元へ伸び、制服のリボン・タイをほどいて黒いワンピースのボタンを外しはじめた。
「だ、だんなさまっ」
 我にかえったセアラが小さく叫んだ。その声は悲鳴に近い。だが、スコットはまったく手をゆるめない。
「大丈夫だよ、可愛いセアラ。ほら、じっとして」
 そろそろコルセットを身につける時期だが、セアラはまだだった。ワンピースの下は薄いブラウスと綿の肌着のみだ。少女はささやかに抵抗を試みたが、男は巧みにそれを封じ、片手で器用にボタンを外していく。するりとはだけられた服の隙間に手を差し入れた。
「ひっ」
 その手の冷たさに、セアラは小さく息を飲む。その瞬間をとらえ、スコットは少女の唇を奪った。


 始めてだった。
 目を見開いたままどうすることもできず、セアラは硬直していた。
 男はその小さな唇を最初に強く吸った後、ついばむようにくちづけ、次いでわずかに伸ばした舌先で歯を割る。ぴちゃ、ぴちゃ、と唾液をならして味わうと一度顔を離した。
 深い青い瞳が少女の瞳を覗き込む。鼻筋の通った端正な顔に口元に少し悪戯っぽい笑みを浮かべた、その表情はこの上もなく優しい。
 スコットはセアラの肩を引きよせ抱きしめた。小さな少女の身体はすっぽりと男の腕の中におさまってしまう。
「可愛いセアラ。目を閉じてごらん」
 セアラは、一瞬の逡巡の後、素直に目を閉じた。
 その細い顎を捕らえ、じらすようにゆっくりと顔を近付ける。震える瞼が愛らしい。
 今度は深く激しく唇をむさぼった。柔らかい舌がぬめって口腔内を蹂躙する。強く吸い、小さな舌を強引にからめとる。
「んっ……んふっ……」
 どのように応えていいかわからず、ただされるままに、苦しげな声が洩れる。
 少女の舌を吸いながら、スコットの手がはだけられた服の隙間から未だ小さな乳房を撫でる。ようやく女性としての特徴を備えはじめたばかりの、僅かなふくらみに、優しく、少しづつ力をくわえていく。
 唇から白い首筋を通って小さな乳首へ。きめ細かい肌に小さな赤い痣を残しながらスコットの舌がはう。柔らかな突起を丹念に舐めまわしていくうちに、スコットの口の中で、それは徐々に固くなっていった。
 小さなとんがりを舌先でころころと転がし、ねっとりと舌を這わせ、軽く噛む。唇で挟み、先端のさらにごく先端を舌でこする。
 少女は目を閉じ、軽く口を開き、わずかに息を乱しながら、時折ぴくんぴくんと身体を震わせる。開発されてない幼い身体がぎこちない快感を、スコットが舌をくねらせる度に少しづつ覚えていく。
 スコットがようやく唇を外した時、ピンクの小さな乳首は固く充血し、ピンと上を向いて勃っていた。唾液に濡れ、ランプの光を弾いてつやつやと光る。
 セアラが目を開けた。潤んだ瞳でスコットを見上げる。
「セアラ……嫌かい?」
 再び抱きしめ、スコットが耳もとにささやいた。
 是とも否とも言わず、掠れた声でセアラはつぶやく。
「だんなさま……はずかしい、です」
「どうして?セアラはこんなに可愛らしいのに」
「でも……」
 スコットの胸に顔を埋め。すがりついた。 
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